納得が環境を作る
経営者として忘れてはならないのは、会社というのは自分だけのものではなく、多くの従業員による集合体であるということです。
経営をする上で、この大勢の従業員をいかにして働かせるのか、というのは重要な手腕の一つとなります。
いわゆるワンマン経営という方針も存在していますが、これは経営者が圧倒的なカリスマ性や魅力を持っているか、あるいは現実的かつ納得のいく経営手腕をもっているか、どちらかでしか成立しません。
前者は先天的な部分が強く、自分の意思では何とかならないことが多いため、目指すのであれば後者ということになるでしょう。
これは何もワンマン経営に限ったことではなく、一般の会社でも重要な要素の一つです。
説得力のある経営方針が存在していれば、それに共感した従業員達の士気をあげ、経営自体を向上させていくことが出来るでしょう。
特にこの経営方針が問題となるのは、既存の方針を打破して新しい方針を打ち立てる、というケースです。
人間、誰しも変化を好ましくは思いません。
特に自分の行う仕事が変わるような変化が起こると、極めて強い反発を招くことになります。
こういった状態に陥って士気が低下して作業効率や経営効率が悪化してしまうことがないようにするためには、新方針がいかに説得力があることであるか、ということが重要になります。
では、説得力のある経営方針を打ち出すためにはどんなことが必要になるのでしょうか?重要なポイントはいくつか存在しています。
説得力に必要なこと
では、説得力のある経営方針に必要なこととして、まず1つ目に「要件の明示」を紹介します。
経営方針を変化させる必要がある、ということは、旧方針を推進することに問題がある、ということに他なりません。
この問題がどこにあり、今後どのぐらいのスピードで顕在化するのか、あるいは現在すでに問題として発生してしまっているのか、というようなことが要件となります。
これに付いて考えるときには、共通目的となる「事業継続」をベースに、どのような手法があるのか、ということを考えていくことになります。
一つ考えられるのは、収益を拡大するという方針です。
この場合、現在は存在していない分野への進出などを考えていくことになる「新規事業路線」を取ることになります。
もう一つとして考えられるのは、経営効率の向上という方針です。
この場合には事業はそのままの路線で継続し、いかにして効率よく、かつコストダウンを測りながら進めていくのか、ということが重要になります。
この2つの路線はいずれも経営を向上させることに意味を持っていますが、相反するものです。
新規事業路線は「変化」が大きい方針であり、経営効率向上路線は「変化」が小さい方針です。
その代わり、成功した際には前者の方がリターンが大きくなりやすく、後者では根本的な解決にならないケースも少なくありません。
このように、「どのような路線をとるのか」という前提をはっきりさせることが、説得力がある経営方針を模索するために重要なポイントとなります。
経営方針の転換は、どのようなものであっても必ずリスクを伴います。
ただ、場合によっては経営方針を変更しないことが緩やかな事業廃止への道筋であることもありますから、そこの見極めをすることが重要になるでしょう。
このように、新しい方針を決定したならば、後問題となるのは従業員に対していかに説明するのか、ということです。
従業員に対して説明する際に重要なのは、経営者としての視点だけで語らないということです。
最初に申し述べたとおり、会社というのは経営者だけによって成り立っているものではなく、従業員の集合体です。
間違っても高圧的に事業変更を告げるようなことがないようにしましょう。
場合によっては役員編成の変更などを行い、現在の路線の失敗に対する責任を見せることも納得を得るためには重要になってきます。
方法論だけを述べるのでは納得してもらうことが難しいケースも少なくありません。
何故経営方針の変化が必要なのか、そのためにはどのようなことを従業員にしてもらわなければならないのか、ということを考える事こそが重要になるわけです。